+++ くだものKURITA  農薬の勉強会 +++


2.安全性評価に必要な試験

 農薬の安全性評価に必要な試験としては、人畜毒性試験や作物残留試験のほか、農薬が使用された場合の周辺環境、特に河川や湖沼などに対する影響、水産動物やその他の非標的生物(蚕、ミツバチなど)に対する影響に関する試験がある。

(1)人畜毒性
 人畜に対する毒性試験としては、「農薬の安全性評価に関する基準」が昭和60年1月28日付け農林水産省農蚕園芸局長通達で示された。この基準は農薬の安全性評価の基本的考え方および安全性評価の基礎となる資料を規定したものである。

 この基礎資料として「農薬の使用に係る安全性評価」および「残留農薬の安全性評価」に必要な資料が示されている。

 また、「毒性試験成績を作成するに当っての指針」も示された。

 この指針は毒性試験実施上の具体的な目安を示しており、関係者の間でガイドライン(GL)と呼ばれて活用されている。

 毒性試験は適正かつ厳正に実施されなければ、その信頼性が失われ、的確な安全性評価はできない。毒性試験成績の信頼性を確保するために導入された制度がGLP(Good Laboratory Practice:農薬の毒性試験の適正実施に関する基準)である。

 その主な内容が次のとおりである。@試験機関は試験の実施に十分な専門職員、施設設備を有するものでなければならない。A試験機関全般の管理運営の責任者(運営管理者)を設置し、その者に試験計画、実施、報告書の作成などについて責任をもたせる。B標準操作手順書を作成し、この手順に従って試験を実施する。C信頼性保証部門(QAU:Quality Assurance Unit)を設置し、試験の実施から報告書作成までを検閲させる。D試験の終了後に生データを含むすべての記録と標本を保管する、などである。
 農薬の毒性検査は、提出された試験実績がこのGLP制度に従って作成されたかどうかを確認することから始められる。

 「農薬の安全性評価に関する基準」には次のような毒性試験が挙げられている。

 急性毒性試験                 長期毒性試験
  急性経口毒性                  慢性毒性
  急性経皮毒性                  発がん性
  急性吸入毒性                特殊毒性試験
  眼一次刺激性                  繁殖性
  皮膚一次刺激性                催奇形性
  皮膚感作性                   変異原性
  急性遅発性神経毒性            その他の試験
 亜急性毒性試験                  生体内運命
  亜急性経口毒性                 生体の機能に及ぼす影響
  亜急性経皮毒性
  亜急性吸入毒性
  亜急性遅発性神経毒性

 これらの毒性試験のうち主なものについて次に説明する。

@急性毒性試験 : 農薬が一度に、しかも多量に動物に取り込まれたときの影響を調べる。ラットやマウスなどの2種類以上の実験動物による経口毒性、1種類以上の実験動物による経皮毒性や吸入毒性などの試験を行う。これらの試験によってLD50(半数致死薬量)またはLC50(半数致死濃度)を測定し、急性毒性症状を記録する。これらの毒性結果に応じて、毒物や劇物に指定される。

A刺激性試験  : 眼や皮膚の一次刺激性とは農薬が眼あるいは皮膚に触れたときの影響を、皮膚感作性とアレルギー性皮膚炎が発症するかを調べる試験である。
 遅発性神経毒性とは運動神経への影響を調べる試験であり、具体的には化合物をめんどりに投与し、運動失調が発症するかを試験する。

B慢性毒性・発がん性試験 : 農薬が農産物に残留して、それを毎日食べたときの影響を調べる試験であり、実験動物にほぼ一生涯にわたり農薬を経口投与し、発がん性の有無や毒性変化が認められない農薬投与量の上限(無毒性量・NOAEL、r/s)などを求める。実験動物としてラットを用いた場合、24ヶ月間、試験する。

C繁殖性試験 : 農薬が次世代に及ぼす影響を調べるため、実験動物に2世代以上にわたって、農薬を毎日投与し、妊娠率、生育異状の有無や無毒性量を求める。

D催奇形性試験 : 実験動物の器官分化の行われる時期に農薬を経口投与し、母体への影響を調べるとともに胎児の生存数、外見などの異状の有無や無毒性量を求める。

E変異原性試験 : 発がん性や遺伝性に影響を及ぼす可能性を調べるため、細菌や哺乳動物の細胞を用いて遺伝子の元となるDNAや染色体を損傷するか否かを試験する。

F生体内運命試験 : 動物体内における吸収、排泄、臓器分布、分解;植物中への吸収、移動、分解;土壌中での移動、分解などについて試験する。


 ここまで読んでくれた人お疲れ様でした。ふぇ〜〜、非常に厳しい試験を潜り抜けて農薬として使用できる訳なんですね、ラットにはなりたくね〜な、と思いつつも安心して使える農薬のために実験台になってくれてる実験動物達の冥福を祈ります。(T_T)

 続いて気になる「作物残留性」・「土壌残留性」へと進みますがどうします?


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